今回は、不真正不作為犯についてわかりやすく解説していきたいとおもいます。
不真正不作為犯とは、作為によって実現されることが通常想定される犯罪を、不作為によって実現する場合をいいます。例えば、一定の立場にある者が必要な救命措置を取らず、人を死亡させた場合に、殺人罪が成立するかが問題となります。
「何もしなかった」というだけで、直ちに犯罪が成立するわけではありません。誰に、どのような行動をする義務があり、それを実行できたのかを確認する必要があります。
作為と不作為をどう区別するか
問題となる結果との関係で、積極的な行動によって危険を生じさせたのか、必要な行動をしなかったことが問題なのかを整理します。
一つの事案に作為と不作為が含まれることはありますが、そのことから当然に二つの犯罪が成立するわけではありません。実行行為をどう評価するかと、複数の犯罪が成立した場合の罪数処理は、別の問題です。
成立要件を整理する
不作為を実行行為として評価する際には、主に次の点を検討します。
・結果を防止するための作為義務があったか
・必要な作為が可能で、容易であったか
・その不作為を作為による実行行為と同等に評価できるか
作為義務の根拠については、法令・契約だけでなく、危険を生じさせた先行行為や、保護を引き受けた事情なども問題となります。ただし、考慮事情を並べるだけでなく、それによってなぜ本人に結果防止を求められるのかを説明することが重要です。
また、これらを検討しただけで犯罪の成立が決まるわけではありません。結果犯であれば因果関係、故意犯であれば故意など、対象となる犯罪の他の要件も確認します。
不真正不作為犯の具体的な判例から考える
作為義務の発生根拠はいろいろあります。
作為義務が発生するのはどういう場合かについて作為義務が発生するかどうかを判断する時に考慮すべきことが何かについては論点となっています。
これは事案ごとに判断するからなかなか一般化は難しいです。とくに重要な判例にシャクティパット事件があります。
シャクティパット事件(最決平成17年7月4日刑集59巻6号403頁)
ここでは、事例判断として先行行為、排他的支配下を示しました。
① 自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせたこと
② 重篤な患者に対する手当てを全面的にゆだねられた立場にあること
③ 医療措置を受けさせないで自らが救命できるとする根拠がなかったこと
この3点を挙げています。
『自己の責めに帰すべき事由により患者の生命に具体的な危険を生じさせ、患者の親族から重篤な患者に対する手当てを全面的に委ねられた立場にある被告人が、未必的な殺意をもって、必要な医療措置を受けさせないまま放置して患者を死亡させたときには不作為による殺人罪が成立する。』
(最決平17・7・4刑集59・6・403)
(大判大4・2・10刑録二一・九〇)
(東京地判昭40・9・30下刑七・九・一八二八)
(大判大7・12・18刑録二四・一五五八)
(大判昭13・3・11刑集一七・二三七)
(最判昭33・9・9刑集一二・一三・二八八二)
(大判大7・7・17刑録二四・九三九)
ということで、今回は以上になります。お読みいただきありがとうございました。


