店舗・事務所の空室が決まらないとき、最初に分ける3つの停滞段階

リーシング

募集を始めたのに問合せが来ない。内見までは入るのに、その先へ進まない…。そのような悩みはありますか?

空室が長引くと、広告をもっと増やすべきではないか、賃料を下げるべきか、仲介会社をもっと回らないと…いろいろな案が出てきます。私も最初の頃は、どうしたらよいのかよくわからなくなっていました。

ただ、案件を重ねるうちに、まずは「どこで止まっているのか」をきちんと把握することが大事だと思うようになりました。

  • そもそも問合せそのものが少ない
  • 問合せはあるが、内見まで進まない
  • 内見はあるが、申込が入らない

同じ「空室が決まらない」でも、止まっている場所が違えば、その理由も違い、見直すところも変わってきます。

この記事では、中小規模の店舗・事務所のリーシングで苦労した経験をもとに、私がどんな順番で状況を見ていたかをまとめます。物件や時期によって当てはまらないこともあると思いますが、初めて募集を担当する人の取っ掛かりにはなるはずです。

立地は変えられない。募集条件は動かせるが、自由には動かせない

店舗や事務所のリーシングでは、結局のところ立地と募集条件の影響がかなり大きいと感じています。

立地は後から変えられません。賃料、保証金、契約期間といった条件には調整の余地がありますが、担当者の判断だけで動かせるものでもなく、オーナーの考え方に左右されます。

だからといって、条件を変えられないから何もできない、というわけでもありません。掲載情報を更新する、写真や見出しを変える、仲介会社へもう一度知らせる、看板や照明を直す。お金をほとんどかけずに試せることもあれば、お金をかけて工事をするというところまで踏み込むこともあります。

私の場合は、立地のように動かせないもの、オーナーとの相談で動かせるもの、担当者の工夫ですぐ変えられるものを、いったん分けて考えていました。

募集が止まる3つの場所

大まかには、次のように見ていました。

止まっている場所気になること先に確認していたこと考えられる動き
問合せがない情報が届いていない、検索で埋もれている、入口の条件で弾かれている掲載状況、更新日、競合物件、賃料、用途、看板情報の更新、仲介への再周知、近隣営業、条件の再検討
問合せはあるが内見されない図面を見た段階、分かりやすいところで候補から外れている問合せ後の経過、鍵、内見可能時間、回答速度写真・図面の修正、回答や内見方法の見直し
内見はあるが申込がない現地で分かる弱点、初期費用、工事負担、回答の遅さ内見後の感想、比較物件、希望条件、貸主側の回答条件調整、現地改善、交渉方針の整理

もちろん、この表だけで原因が分かるほど単純な話ではないと思います。私も、いくつか手を打ってみたものの、最後まで理由をはっきりつかめなかった案件があります。それでも、次にどこを見に行くかは決めやすくなりました。

問合せがないときは、まず情報の届き方を疑ってみる

業者間サイトへ掲載すれば、仲介会社が継続して見てくれるような気がします。実際には、そこまで都合よくはいきません。

私が扱った物件では、立地のよい1階店舗であっても、募集開始直後の反響が一巡すると、2~3週間ほどで動きが鈍くなることがありました。周辺に新しい募集が出れば、エリア検索の中で少しずつ埋もれていきます。

そこで、2週間程度を一つの目安に掲載状況を見直していました。決まったルールというほどのものではなく、私が案件を追うために置いていた目安です。写真や見出し、条件に直すところがないかを見て、必要なら情報を上げ直します。(あえて写真を差し替えたり)

もう一つ、後になって実感したのが、掲載していることと、地域の仲介会社に知られていることは同じではない、という点です。

ある新宿の事務所・店舗案件では、半年募集して内見が5件でした。ポータルへの掲載を続け、地域の不動産会社や店舗へ図面を持って回りましたが、建物を知っているのに空室だとは知らないという会社がかなりありました。私たちが物件を取得するよりずっと前に、その建物で客付けをしたことのある会社もありました。

こちらは半年も募集しているので、当然ある程度は知られていると思っていました。実際に回ってみると、その前提から違っていました。ネット掲載するだけではだめなんだと学びました。

問合せ後に内見へ進まないなら、その間で何が起きたかを見る

問合せ件数が付いていると、「反響はある」と報告しやすくなります。ただ、図面を送ったところで止まっているなら、募集としてはまだ動いていません。

私は、次のような点を一件ずつ追うようにしていました。

  • 図面を送った後、どんな理由で話が止まったのか
  • 写真や条件面のどこを見て候補から外れたのか
  • 内見できるタイミングは限られていないか
  • 問合せへの返事に時間がかかっていないか
  • 貸主へ確認中のまま、回答が止まっていないか

具体的な理由が聞けないことも多いです。「検討します」「今回は見送ります」で終わることもあります。それでも、何件か続けて見れば、似たところで止まっていることも見えてきます。

広告を増やす前に、問合せから内見確定までを一度たどってみる。地味ですが、私にはこちらの方が役に立つことが多かったです。

内見後に申込がないなら、現地で何が違って見えたのか

内見まで来ている人は、少なくとも立地や図面のどこかに関心を持っています。それでも申込にならないなら、現地に来て初めて気づくことがあるとか、費用・契約条件が引っ掛かっているとかなのかもしれません。

店舗であれば、看板の見え方、どこに置けるか、ファサード、入口の明るさ、設備、内装工事の負担などがあります。事務所なら、エントランスや共用部、室内の明るさ、きれいさ、来客時の印象も見られると思います。

内見後に「検討します」と言われたときは、仲介会社を通じて、できる範囲で次のことを聞きました。

  • ほかにどんな物件を見ているか
  • 現地で気になったところはあったか
  • 賃料以外に負担になっている条件はあるか
  • 工事や入居時期など希望はあるか
  • 条件次第で申込を出せそうか

仲介会社から、いつも詳しい答えが返ってくるとは限りません。借主自身が理由を整理できていないこともあります。それでも聞かずに終えるよりは、次の内見で見るべきところが残ります。

条件を動かすなら、月額賃料以外も考える

募集条件を見直す話になると、最初に出てくるのは賃料だと思います。ただ、実務ではほかにも調整できるところがありました。

  • フリーレント(入居時一定期間、賃料を免除する条件)を付ける
  • 一時的に賃料負担を軽くするレントホリデーを設ける
  • 保証金を下げる
  • 初期費用の一部を調整する
  • 1年目を抑え、2年目以降に上げる段階賃料にする
  • 契約期間を長くする、条件を緩和する
  • 看板設置や内装の要望を認める

店舗は、居抜きであっても内装にかなりお金がかかることがあります。スケルトンならなおさらです。借主が長く入りたいと考える理由には、投資を回収したい事情もあります。契約期間と経済条件をまとめて考えた方が、話が着地しやすい場面もありました。事務所は定着したいので普通借家が多く賃料を抑えたいニーズが多いですが、たまに人員を増やしていきそのうち手狭になるから定借でもよいというところもあります。できるだけヒアリングして情報収集することが様々な交渉材料となります。

交渉で困るのは、「できる範囲で考えます」といった曖昧なやり取りが続くことです。希望額や必要な期間を聞き、情報を可能な限り集め、貸主側もどこまでなら歩み寄れるのかを具体的に詰めていった方が、少なくとも話の落とし所は見えやすくなります。

条件を変えられないときに試したこと

オーナーの考えで賃料や保証金を全く動かせないこともあります。そのとき、私が実際に試したのは次のようなことでした。

  • 掲載サイトの情報を更新する
  • 写真を撮り直す
  • 図面の見出しや見せ方を変える
  • 現地に募集看板を出す
  • 地域の仲介会社を回る
  • 以前訪問した会社へ、少し間を空けてもう一度知らせる
  • 最寄り駅だけでなく、隣駅や似たようなエリアまで回る
  • 袖看板や内照式看板を修理する(可能な場合)
  • エントランス、ファサード、照明を見直す ※費用をかけられるなら、工事で貸室の使い勝手を変える

これをどの物件でも全部やっていたわけではなく、募集期間、見込める賃料、工事費、保有方針を見ながら、できそうなものを選んでいました。

看板一つでも、印象が変わります。内照式なのに壊れたまま光らない看板を直したときは、ただ修理することを伝えるより、「今まではそのままにしていたが、御社に入居してほしいので、今回きちんと使えるように直すんですよ」といったふうに伝えた方が、借主の受け取り方も少し違うように感じました。設備そのものより、貸主側が前向きに動いていることを見せることができました。

件数を数えるだけでなく、次に何をするかまで残す

私は、少なくとも次の項目は一件ごとに残すようにしていました。

  • 問合せ日
  • 問合せ元の会社と担当者
  • 候補者の業種・用途
  • 希望条件
  • 内見の有無と日付
  • 内見後の反応
  • 分かる範囲での見送り理由
  • 条件交渉の内容
  • 次に行うことと期限

件数が多ければ決まるとも限りませんし、記録を残しても原因が分からないことはあります。ただ、オーナーへ状況を説明するときや、次の2週間で何を変えるかを考えるときには、この記録がないと話が感覚的になりがちでした。

最後に

空室募集が動かないとき、私はまず、問合せ、内見、申込のどこで止まっているかを見るようにしていました。

そのうえで、情報が届いていないのか、現地に弱点があるのか、条件が合っていないのか、こちらの回答が遅いのかを考えます。原因が一つに絞れないことも多く、いくつか直しても決まらない物件はあります。

それでも、「空室対策を何かやる」より、「今はここで止まっていそうだから、次はこれを試す」と考えた方が、社内やオーナーにも説明しやすくなりました。

次の記事では、募集開始から約10日間で12件以上の内見が入ったところで条件交渉があり、要求を受けるか、決めずにもっといいところが出てくるのを待つのかという微妙な決断が必要だったときの話をどう考えたのかについて書ければ(予定)と思います。

タイトルとURLをコピーしました