マイソクをポータルサイトに載せたくさん業者にも情報を出し仲介会社へも配った…。
ここまでやると、募集情報はひととおり市場へ届いたように思えます。私も以前はそう思ってました。
ところが別の機会で仲介会社に行った際、担当者が違えば建物は知っていても空室だとは知らなかった。近隣の業者に行ってみると、これも同じような反応。一度、図面を渡した会社でさえも、物件のことを覚えていない…。そういうことが何度もありました。
情報を出したことと、必要な人に届いていることの間には、思っているより距離があるのです。
今回は、新宿で担当した店舗と事務所の二つの案件を取り上げます。どちらも、掲載や図面の修正だけでは動きませんでした。近隣や隣駅の仲介会社を回り直したことで、ちょうど発生したばかりの需要に出会えた案件です。
結果だけを見ると偶然です。ただ、その偶然を拾えたのは、同じ場所をもう一度回ったからでもあります。
募集情報は、出したままにしていると少しずつ埋もれていく
ポータルや業者間サイトへ載せた直後は、新着情報として見てもらいやすくなります。しばらくすると周辺の募集が増え、検索結果の中で目立たなくなっていきます。
私が扱った物件では、立地のよい物件でも、2~3週間ほどで反響が落ちることがありました。もちろん、物件や市況によって違います。私自身は、2週間程度を一つの目安に、掲載がどう見えているかを確認していました。
- 写真が古くなっていないか
- 見出しで物件の特徴が伝わるか
- 条件変更が正しく反映されているか
- 掲載が落ちたり、古い情報のまま残ったりしていないか
- 仲介会社が顧客へ見せやすい図面になっているか
直せるところがあれば直して、情報を上げ直します。ただ、これだけで急に決まるとも限りません。
半年募集して内見5件。新宿の店舗でも苦戦…
ある新宿の店舗は、半年ほど募集して、内見が5件ほどでした。
ポータルサイトへの掲載は続けていました。それに加えて、地域の不動産会社や店舗へ募集図面を持って回りましたが大手やフランチャイズ加盟店だけでなく、地域で長く営業している小さな会社や、ほぼ一人でやっているような会社にも突撃しました。
回ってみて意外だったのは、半年も募集しているのに、空室だと知られていなかったことです。
なかでも、建物自体は知っている。以前、この建物で客付けしたこともある。それでも、いま募集していることは知らなかった。そういう会社がありました。
こちらからすると、ポータルサイトにも出しているし、建物にも募集看板をつけていて、半年も経っているので、地域の不動産会社なら何となく知っているだろうと思っていました。ただ意外にも現場では、そんなに情報は残っていないのです。
毎日たくさんの物件情報を見る仲介会社からすれば、当然なのだと思います。(異常なほど記憶力が高いひともよくいますが…。)貸主にとっては一つの大切な空室でも、ほかの人にとっては数多くある募集の一つなのです。
現地の募集看板も、紙の図面も使った
この店舗では、建物に募集看板を出しました。立派なものではなく、募集情報をラミネートし、テープで貼る程度の簡易な掲示です。
見栄えは洗練されていませんが、現地を通る人へ「ここが空いている」と知らせる役割はあります。募集していること自体を知られていないなら、まずはそこからでした。
いろいろなところへ募集情報を直接持ち込みました。ポータルサイト、客付け業者、近隣の仲介、地場の管理会社。できる範囲で接点を増やしました。
それでも、すぐには決まりませんでした。
最終的には、以前から付き合いのあった業者から、地方から東京の第1号店を出したいという企業がたまたま出てきたのですが、ほぼ奇跡です。。立地も募集賃料も絶妙なところではあったのですが、新宿という地名だけを聞けば、もっと簡単に決まってもおかしくなかったはずです。実際には、かなり苦戦してしまいました。
興味深かったのは、その1年後です。同じ物件で、今度はもっと高い賃料で決まり、空きが出ると反響が集まる状態になりました。
物件自体が急に別物になったとは思えません。時期や需要との重なりで、これほど動きが変わることがあります。募集が長引いていると「この物件には力がない」と決めつけたくなりますが、その評価もずっと同じとは限らないのだと思います。
反響69件、内見10件。それでも決まらなかった事務所
別の新宿の事務所では、合計70件近い反響があり、内見は10件前後でした。募集を始めて3~4か月ほどで年末を迎えましたが、申込にはつながりません。
年が明けてから、もう一度テコ入れ。
- 付き合いのある客付け仲介へ持ち込む
- 事務所仲介会社を新しく回る
- 写真を撮り直す
- ほかの募集図面を参考に、見出しや言葉を変える
- ポータルの情報を上げ直す
それでも、目に見えて内見が増えた感覚はありませんでした。たまに内見希望が入っても、その後の申込は来ませんでした。
いろいろ試して動かないと、次に何をすればよいのか分からなくなります。私もそうでした。
そこで、しばらく物件の近くを回っていなかったことを思い出しました。一度は営業したエリアです。それでも、もう一度、一から回ってみることにしました。
最寄り駅だけでなく、一つ隣の駅も回った
再訪では、物件の最寄り駅だけでなく、一つ隣の駅まで足を延ばしました。
隣駅には、最寄り駅より少しグレードの高い事務所が集まっていました。物件と同じ駅だけを見るより、近隣で移転を考える企業を扱っていそうな仲介会社まで回った方がよいかもしれない。そんな程度の考えでした。
何社か回るうちに、時刻は19時頃になっていました。そろそろ帰ろうと思ったところ、まだ開いている店がありました。「ここを最後にしよう」と入ってみました。
すると、ある企業から、現在の貸主と更新をめぐって揉めており、近くで次の事務所を探したいという相談を受けたばかりだと言われました。希望する広さも賃料感も、こちらの物件に近いものでした。
その需要は、前回その会社を訪ねた時点では、まだなかったのだと思います。
早い時間に切り上げていたら、別の日にしていたら、その会社へ入っていなかったかもしれません。かなり偶然に近い出会いでした。ただ、現地へ行かなければ、その偶然すら起きませんでした。
一度伝えた相手へ、なぜもう一度伝えるのか
仲介会社へ再訪する意味は、忘れられた物件を思い出してもらうことだけではないと、この案件で感じました。
前回訪問した後に、新しい移転相談や出店相談が入っているかもしれません。更新、賃料、立退き、建替え、貸主との関係など、借主が動き出す理由は突然発生します。
募集を始めた日に一斉に情報を出しても、翌月に生まれた需要までは拾えません。
業界では「結局はご縁」「タイミングが大事」と言われることがあります。たしかに、その要素は大きいと思います。ただ、待っているだけの場合と、情報を更新してもう一度届ける場合では、そのタイミングに触れる回数が変わります。
私には、タイミングそのものを作ることはできませんでした。接点を増やし、拾える可能性を少し上げるところまでが、担当者にできることだったのだと思います。
再訪が、ただの催促にならないようにする
同じ情報を何度も送ればよい、という話でもありません。相手からすれば、変化のない図面を短い間隔で繰り返し送られても、負担になります。
再訪や再周知をするときは、できれば何か一つ、前回との違いを持たせていました。
- 写真や図面を変えた
- 賃料や保証金などの条件が変わった
- 看板や設備を直した
- 内見可能な時期や方法が変わった
- 想定する業種や使い方を見直した
- 前回からある程度時間が空いた
- なぜその会社の顧客に合いそうなのか、説明できる
いつも新しい材料を用意できるとは限りません。単純に、前回は忙しくて図面を見てもらえていなかっただけ、ということもあります。その場合も、長々と説明せず、物件の要点だけを伝え、反応が薄ければ深追いしませんでした。
「その後、何か客はいませんか」と聞くだけの訪問を続けると、お互いにしんどくなります。相手が思い出しやすく、紹介しやすい材料を一つ添える。そのくらいの感覚がよかったように思います。
地場仲介を回るとき、私が見ていたこと
訪問先は、多ければ多いほどよいとも思っていませんでした。物件との接点がありそうかを考えます。
- 最寄り駅で店舗や事務所の仲介を扱っているか
- 隣駅や似たエリアも商圏にしているか
- 地域で長く営業している小規模な会社がないか
- 過去に同じ建物や周辺物件を客付けした会社がないか
- 想定する業種・規模の相談を受けていそうか
- どのエリアから移ってくる可能性があるか
店舗の需要は、新規出店だけではないと思います。更新条件が合わない、建替えで出なければならない、現在の賃料が重いといった事情で移ることもあります。事務所も同じで、面積を変えたい、少し賃料を抑えたい、現在の貸主との関係を整理したいなど、表からは見えない理由があります。
こちらから、その事情をすべて探し当てるのは難しいです。地場の仲介会社が相談を受けた瞬間に、自分の物件を思い出してもらえる状態をつくる。そのために回っていた面もありました。
最後に
ポータルサイトへ載せ、募集図面を配っても、情報が十分に届いているとは限りません。
建物を知っている会社が、空室を知らない。一度訪問した会社が、物件を覚えていない。前回訪問した後に、ちょうどよい移転需要が発生する。現場では、こうしたことが普通に起こります。
私が担当した案件では、掲載情報を2週間程度で見直し、必要に応じて上げ直していました。仲介会社も、一度回って終わりにせず、少し時間を空けて再訪しました。最寄り駅で動かなければ、隣駅や似たエリアまで広げることもありました。
もちろん、それだけで決まるほど簡単でもなく、いろいろ試しても長く決まらない物件はありました。
それでも、需要が生まれる時期はこちらでは選べません。情報を届け直し、その需要が生まれたときに物件を思い出してもらえるようにしておく。リーシングの地味な部分ですが、私はそこにかなり時間を使っていました。

