仕入担当者が最初につまずきやすい仕事の一つが、新規の不動産会社への電話です。
電話をかけても担当者へつないでもらえない。説明の途中で断られる。メールを送っても返信がない。アポイントを取れても、その後に物件情報が届かない。
こうした状況が続くと、話し方や押しの強さが足りないと考えがちです。しかし、初回電話の役割は、電話だけで関係を完成させることではありません。
相手の業務を確認し、自社との接点を見つけ、次の会話につながる状態をつくることが目的です。
この記事では、不動産仕入れの初回電話について、事前準備、最初の伝え方、確認すべき質問、断られたときの対応、通話後の記録までを整理します。
初回電話の目的を決める
初回電話の目的を「必ずアポイントを取ること」にすると、相手の状況を確認せずに面談を迫る会話になりやすくなります。
相手が事業用不動産を扱っているか、担当部署がどこか、自社の取得対象と接点があるかも分からない段階です。この状態では、アポイントを断られても、会社との相性が悪いのか、担当者が違うのか、単にタイミングが悪いのか判断できません。
初回電話では、次のうち一つ以上を達成できれば前進です。
①担当部署と担当者を確認する
②相手が扱う物件・エリア・価格帯を知る
③自社が購入する会社であることを伝える
④資料を送る許可と送付先を得る
⑤再連絡または面談の機会を得る
すべてを一度の電話で達成する必要はありません。受付で担当部署を確認できただけでも、次回は相手を特定して連絡できます。
電話の前に準備すること
初回電話の結果は、話し方よりも事前準備に左右されます。最低限、次の3点を整理してから電話します。
A|相手の業務を一つ確認する
会社のウェブサイトや取引実績を見て、連絡理由になる情報を一つ探します。
- 事業用不動産の売買実績
- 管理している物件の用途・エリア
- 自社取得・開発・再販の実績
- 店頭や現地に掲示された募集・管理看板
- 得意とする顧客層や価格帯
すべてを詳しく調べる必要はありません。「都内の事業用ビルを扱っている」「対象エリアで管理物件を持っている」など、電話した理由を説明できる材料が一つあれば十分です。
B|自社の取得クライテリアを短くする
初回電話で細かな取得条件をすべて読み上げても、相手には残りません。
最初は次の4項目に絞ります。
①何を買うか
②主なエリア
③検討しやすい価格帯
④取得後に何をするか
例えば、次の程度にまとめます。
当社は都内の店舗・事務所系の一棟ビルを自社で取得しています。取得後は中長期で保有し、空室のリーシングや賃料改善を行うため、空室や低賃料が残る物件も検討しています。
数字や条件は、自社の実際の取得方針と社外に開示できる範囲に合わせます。
C|今回確認したいことを一つ決める
電話の目的を一つに絞ります。
- 事業用売買の担当部署を知りたい
- 一棟ビルを扱っているか確認したい
- 買主向けの情報交換が可能か聞きたい
- 管理物件の売却相談を扱う部署があるか知りたい
- 取得担当者と面談できるか確認したい
目的が明確なら、会話が想定外に進んでも戻る場所があります。
最初の20秒で伝えること
相手は、自分が誰で、なぜ電話してきたのか分からない状態で受話器を取ります。最初の説明は、次の順番にします。
①会社名と氏名
②自社で不動産を取得する買主であること
③相手へ連絡した理由
④話したい部署・担当者
A|受付への基本例
お世話になります。〇〇株式会社の〇〇と申します。当社では事業用不動産を自社で取得しています。御社が都内の一棟ビルの売買を扱っていると拝見し、情報交換についてご相談したくお電話しました。事業用売買のご担当者様はいらっしゃいますでしょうか。
受付では、取得条件を詳しく説明する必要はありません。電話の目的と、どの担当者につないでほしいのかを明確にします。
B|担当者につながった後の基本例
突然のお電話失礼いたします。〇〇株式会社で不動産の仕入れを担当している〇〇と申します。当社は都内の店舗・事務所系の一棟ビルを自社で取得しています。御社の取引実績を拝見し、当社の対象と重なる案件について情報交換できればと思い、ご連絡しました。今、1、2分ほどお時間よろしいでしょうか。
最初に時間を確認すると、相手が話せる状態か分かります。忙しい場合は、その場で説明を続けず、再連絡する時間を確認します。
相手別の伝え方と質問
相手の業務によって、伝える内容と質問を変えます。全員へ同じ営業トークを使わないことが重要です。
A|法人向け売買仲介会社
法人向け売買仲介会社には、自社が実需ではなく、継続的に取得する買主であることを伝えます。
確認する内容は次のとおりです。
- 主に扱うエリア・用途・価格帯
- 売主側と買主側のどちらが多いか
- どのような買主と取引しているか
- 物件情報を案内する方法
- 取得クライテリアを送付してよいか
会話例:
当社は店舗・事務所が入る一棟収益ビルを中心に、自社で継続的に取得しています。御社では、どのエリアや価格帯の事業用物件を扱うことが多いでしょうか。
相手の得意領域を聞いたうえで、自社との重なりを確認します。
B|地域の不動産会社・管理会社
地域会社や管理会社へ、いきなり「売物件をください」と依頼しても、担当者の業務と合わない場合があります。
まず、売却相談を扱う部署や担当者の有無を確認します。
- 事業用物件の管理実績があるか
- オーナーからの売却相談を扱うか
- 売買部門または提携する仲介会社があるか
- 一棟物の売買を扱った実績があるか
- 買主として会社紹介を送付してよいか
会話例:
御社がこのエリアで事業用ビルを管理されていると拝見しました。当社は同エリアで一棟ビルを取得しています。オーナー様からの売却相談について、御社内で担当される部署はございますでしょうか。
管理担当者に売却情報を求めるのではなく、情報が動いたときの社内経路を確認する質問にします。
C|買取・開発会社
買取・開発会社は、仲介会社ではなく、自社と同じ買主側の場合があります。単純に物件紹介を依頼するのではなく、どこに取引の接点があるかを考えます。
- 取得・開発するエリアと用途
- 完成物件・保有物件の売却方針
- 検討対象が重ならない案件の情報交換
- 共同検討・隣地・権利調整の可能性
- 自社の取得対象となる売却商品の有無
会話例:
御社が小規模商業ビルの取得・再生をされていると拝見しました。当社も近い領域で取得しています。完成後の売却や、検討対象が異なる案件について、情報交換の可能性があるか伺いたくご連絡しました。
競合する部分だけでなく、出口や得意領域の違いに接点がないかを確認します。
初回電話で聞くべき質問
担当者につながったら、自社の説明だけで終わらせず、相手の業務を確認します。
初回は、次の中から会話に合うものを2、3問選びます。
A|相手の取扱領域
- どのエリアの案件を扱うことが多いですか
- 店舗、事務所、住宅では、どの用途が多いですか
- どの程度の価格帯が中心ですか
- 一棟収益物件の売買も扱っていますか
B|情報の流れ
- 売主から直接相談を受ける案件が多いですか
- 買主への情報案内は、どのような方法で行っていますか
- 取得クライテリアをお送りしてもよいでしょうか
- 案件の窓口となる方は、どなたでしょうか
C|次の接点
- 一度、会社案内と取得条件をお送りしてもよいでしょうか
- 改めてお電話する場合、いつ頃がよいでしょうか
- 可能であれば、短時間ご挨拶に伺えますでしょうか
- オンラインと訪問では、どちらがご都合よいでしょうか
質問を続けすぎると、相手に負担をかけます。初回電話の目的に必要な情報が得られたら、一度会話を終えます。
アポイントを取るときの考え方
面談を依頼するときは、「情報交換をしたい」だけで終わらせず、会う理由を具体化します。
当社の取得条件を短くご説明し、御社が扱われる案件との重なりを確認したいと考えています。30分ほどご挨拶のお時間をいただくことは可能でしょうか。
相手の場所や時間を尊重し、訪問・オンライン・電話のいずれでも対応できるようにします。
ただし、アポイントが取れなくても、次の情報を得られれば関係を続けられます。
- 担当者名と連絡先
- 会社案内の送付先
- 再連絡してよい時期
- 案件が出たときの連絡方法
面談の件数だけで初回電話を評価しないことが重要です。
断られたときの対応
新規の連絡を受け付けない会社や、担当者を外部へ案内しない会社もあります。断られたときに強く押しても、将来の接点を失う可能性があります。
A|新規の取引先を受け付けていない
承知しました。差し支えなければ、会社案内だけお送りしてもよろしいでしょうか。今後、取引先を見直される機会がありましたら、ご確認いただければ幸いです。
資料送付も断られた場合は、無理に続けず終了します。
B|現在は紹介できる案件がない
承知しました。現在の案件の有無ではなく、今後対象となる案件が出た際のために、当社の取得条件をご説明できればと考えております。会社案内をお送りしてもよろしいでしょうか。
「今、物件がない」ことと「今後も接点がない」ことは別です。ただし、相手が会話を望んでいなければ深追いしません。
C|メールで送ってほしい
承知しました。ご担当者様のお名前と送付先を伺ってもよろしいでしょうか。取得条件を簡潔にまとめてお送りします。
メール送付後は放置せず、数営業日後を目安に確認の連絡をします。相手から指定があれば、その時期に従います。
D|忙しいと言われた
失礼いたしました。改めてお電話したいのですが、ご都合のよい曜日や時間帯はございますでしょうか。
時間を決められない場合は、短く用件を伝えて終了します。
初回電話で避けること
次の対応は、相手が自社を判断しにくくなるため避けます。
A|「何でも検討します」と伝える
検討範囲を広く見せても、相手はどの案件を送ればよいか分かりません。対象となる用途、エリア、価格帯、取得後の方針を簡潔に示します。
B|相手の業務を確認せずに面談を迫る
自社との接点がなければ、面談しても具体的な話になりません。先に相手の取扱領域を確認します。
C|長い会社説明を続ける
初回電話では、相手が必要とする情報だけを短く伝えます。会社沿革や組織全体の説明は、質問された場合や面談時に行います。
D|答えられない条件を推測で答える
取得クライテリアの例外や社外開示の可否が分からない場合は、社内で確認して回答します。その場を埋めるために条件を作ってはいけません。
E|断られた理由を記録しない
受付で止まったのか、担当者と条件が合わなかったのか、時期が悪かったのかで次の対応は変わります。単に「不通」「アポ不可」とだけ記録しないようにします。
電話後に記録すること
通話後すぐに、次の内容を営業リストへ記録します。
- 電話した日時
- 対応者・担当者の氏名と部署
- 相手の主な業務
- 得意なエリア・用途・価格帯
- 自社説明に対する反応
- 資料送付の可否と送付先
- 面談・再連絡の日時
- 次回確認すること
- 対象外または断られた理由
記録の目的は、電話件数を集計することではありません。
どの相手に、どの説明をしたとき、次の会話につながったのかを確認し、営業先の選び方と説明を改善するために使います。
初回電話のチェックリスト
- 相手の業務や実績を一つ確認した
- 連絡した理由を一文で説明できる
- 自社が購入する買主であることを伝えられる
- 取得クライテリアを短く説明できる
- 今回確認したいことを一つ決めた
- 相手が話せる時間か確認した
- 相手の取扱領域を質問した
- 資料送付・再連絡・面談のいずれかにつなげた
- 通話結果と次回行動を記録した
まとめ
不動産仕入れの初回電話は、電話だけで案件を獲得する場ではありません。
相手がどのような情報に接する会社なのかを確認し、自社が何を取得する買主なのかを伝え、次の会話へつながる接点をつくることが目的です。
アポイントが取れなくても、担当部署、取扱領域、資料の送付先、再連絡時期が分かれば前進しています。反対に、面談件数だけを追い、相手の業務や反応を記録しなければ、電話を重ねても改善につながりません。
事前に相手を一つ調べ、自社の説明を短くし、確認したいことを一つ決める。この準備を積み重ねることで、初回電話は単なる件数消化ではなく、情報ルートを作る仕事になります。
次の記事では、初回面談で何を聞き、何を伝え、次の情報提供へつなげるかを整理します。


