仕入担当になり、自社の取得クライテリアを覚えると、次に求められるのが情報収集です。
仲介会社へ電話して、物件情報を集めてきて。
そこで不動産会社を検索し、上から順番に電話をかけても、なかなか面談につながりません。会えても情報が来ない、届いても自社では検討できない案件ばかりということがあります。
電話の話し方にも改善点はあります。しかし、その前に確認すべきなのは、連絡している相手が、自社の欲しい物件情報に接する会社なのかという点です。
同じ「不動産会社」でも、売買仲介、賃貸仲介、管理、買取、開発では、普段接している顧客と情報が異なります。情報の流れを理解せずに電話件数だけを増やすと、接点のない相手へ同じ説明を繰り返すことになります。
この記事では、事業用不動産の売却情報がどこで生まれ、どのような会社を通じて買主へ届くのかを整理します。後半では、初心者が営業先リストを作る方法まで解説します。
物件情報は売却相談から始まる
物件情報は、最初から販売図面の形で存在するわけではありません。
出発点は、不動産の所有者や保有会社が売却を考え始めることです。
- 相続や資産整理を考えている
- 借入金を返済したい
- 別の事業へ資金を使いたい
- 管理の負担を減らしたい
- 資産を入れ替えたい
- 開発や再生を終えて売却したい
所有者は、普段から付き合いのある会社や担当者へ相談します。相談先は売買仲介会社とは限りません。管理会社、賃貸付けを依頼している会社、金融機関、士業、過去に取引した会社など、入口は複数あります。
相談を受けた会社は、物件の内容と売主の希望を確認し、誰へどのように話を持っていくかを考えます。
大まかな流れは次のとおりです。
①所有者が売却を検討する
②身近な会社や担当者へ相談する
③物件資料と売却条件を整理する
④特定の買主へ個別に打診する
⑤必要に応じて広く市場へ出す
すべての情報が、最初から広く公開されるわけではありません。売主が周囲に知られずに進めたい場合や、仲介担当者が条件の合う買主へ先に相談する場合があります。
一方、広く買主を探すため、REINS(レインズ/Real Estate Information Network System/不動産流通標準情報システム)や不動産情報サイトへ掲載される案件もあります。
公開前の情報だから必ず安い、というわけではありません。ただし、情報がどの段階にあり、誰を経由しているのかは、売主との距離、競争状況、回答期限を考える材料になります。
不動産会社ならどこでも同じではない
営業先を探すときは、会社の知名度や所在地だけではなく、その会社がどの場面で売却情報に接するのかを確認します。
代表的な接触先は次のとおりです。
| 会社・部門 | 情報に接する主な場面 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 法人向け売買仲介 | 法人・投資家・資産管理会社から売却相談を受ける | 得意な用途、価格帯、顧客層 |
| 地域の売買会社 | 地主・地元オーナーから相談を受ける | 事業用売買の実績、対象エリア |
| 賃貸管理会社 | 管理物件の相続・資産整理・管理負担の相談を受ける | 売買部門の有無、管理物件の用途 |
| 買取・開発会社 | 自社取得、開発、再販、資産入替えで売買に関わる | 取得対象、売却商品、協業の余地 |
| 住宅売買・賃貸中心の会社 | 個人顧客や小規模物件の相談を受ける | 一棟物・事業用物件の取扱いの有無 |
この分類だけで会社を決めつけてはいけません。大手でも部署によって扱う物件は異なります。地域の賃貸会社が、長年付き合うオーナーから一棟ビルの売却相談を受けることもあります。
確認すべきなのは次の3点です。
①普段、誰と接している会社か
②どのような物件の相談を受ける会社か
③自社と売買・情報交換・協業の接点があるか
電話の件数を増やす前に、この3点を調べるだけでも、連絡する意味のある相手が見えやすくなります。
最初の営業先リストを作る
最初から数百社のリストを作る必要はありません。自社が取得したい物件との接点を確認できる会社から集めます。
A|取得クライテリアを検索語へ変える
自社の取得クライテリアを、営業先を探すための検索語に変換します。
例えば、東京都内の店舗・事務所ビルを取得する会社なら、次のように組み合わせます。
- 対象エリア+事業用不動産+売買
- 対象エリア+収益ビル+仲介
- 対象エリア+一棟ビル+買取
- 対象エリア+店舗+管理
- 対象エリア+オフィス+売買実績
「不動産会社」だけで検索すると、賃貸住宅や戸建てを主業とする会社も混ざります。エリア、用途、取引形態を組み合わせることが重要です。
B|会社の実績と日常業務を見る
会社概要だけでなく、実際の業務が分かる情報を確認します。
- 売買実績・取引事例
- 現在扱っている売物件・賃貸物件
- 管理物件の用途とエリア
- 自社取得・開発・再販の実績
- 担当部署と問い合わせ先
- 採用情報に書かれた業務内容
- 現地の募集看板・管理看板
- 取引や開発に関する記事
「総合不動産会社」と書かれていても、実績の大半が賃貸住宅の場合があります。反対に、売買実績の掲載が少なくても、事業用物件の管理看板を多く出している会社もあります。
一つの情報だけで判断せず、複数の手掛かりから普段の業務を確認します。
C|優先順位を付ける
集めた会社は、最初に3段階で仮分類します。
| 優先度 | 状態 | 行動 |
|---|---|---|
| A | 自社の対象物件との接点が具体的に見える | 連絡理由を作り、優先して接触する |
| B | 接点はありそうだが、部署や実績が不明 | 電話で業務内容を確認する |
| C | 現時点で接点が薄い、または確認できない | 保留し、件数を増やすためだけに追わない |
これは会社の優劣ではありません。現在の自社との接点による分類です。取得方針が変われば、優先順位も変わります。
会社名より情報に接する位置を見る
同じ会社でも、接触する部署や担当者によって会話は変わります。
法人売買部門には、取り扱う案件や顧客層を確認します。管理会社には、いきなり物件紹介を依頼するのではなく、売却相談を扱う部署があるかを聞きます。買取・開発会社には、取得対象の重なり、完成物件の売買、共同検討の可能性を確認します。
初心者が避けたいのは、相手の仕事を確認せず、全員へ同じ言葉を伝えることです。
売物件があれば、何でも送ってください。
賃貸管理の担当者は、なぜ自分へ連絡してきたのか分かりません。買取会社に同じ言葉を使えば、自社が買主なのか、仲介案件を探しているのかも曖昧になります。
自社で物件を取得する会社なら、仲介を獲得しに来た会社ではなく、購入する買主であることが伝わる説明が必要です。
そのうえで、相手との接点を一つ探します。
- 相手が仲介する物件を自社が買う
- 相手の保有・開発物件を自社が買う
- 相手が取り組みにくい案件を自社が検討する
- 自社の売却時に相手へ相談する
- 管理・リーシング・工事などで将来協業する
初回の電話で、すべてを説明する必要はありません。「この会社とは、どこで仕事がつながるのか」という仮説を一つ持てれば十分です。
営業リストを電話帳で終わらせない
営業リストの役割は、会社名と電話番号を保存することではありません。
どのような相手に、何を伝えたとき、次の会話につながったかを学ぶ記録として使います。
最低限、次の項目を残します。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 会社名・部署 | 担当部署まで記録する |
| 担当者名・役職 | 誰と話したか |
| 主な業務 | 仲介、管理、買取、開発など |
| 得意な物件 | エリア、用途、価格帯、顧客層 |
| 自社との接点 | なぜ連絡するのか |
| 初回連絡日・結果 | 不在、取次不可、会話、面談など |
| 相手の反応 | 関心を示した点、合わなかった点 |
| 面談日・内容 | 相手の業務、自社の説明、宿題 |
| 次回行動 | 再連絡日、送付資料、確認事項 |
| 情報受領後の対応 | 検討、追加資料、見送り、回答日 |
特に重要なのは「主な業務」「自社との接点」「次回行動」です。
電話件数だけを記録しても、何を改善すべきか分かりません。どの会社では面談につながったか、どの説明では対象外の情報が多かったかを比較すると、次に探す会社と伝え方の修正点が見えてきます。
営業リストは件数の管理表ではなく、自分の仕入営業を学習させる表です。
一社ごとに連絡した理由を持つ
電話をする前に、次の一文を埋めます。
御社が____に関わっていると知り、当社の____と接点があると考えて連絡しました。
A|法人向け売買仲介会社への例
都内の店舗・事務所ビルの売買を多く扱っていると拝見し、当社の取得対象と重なるためご連絡しました。
B|管理会社への例
城南エリアで事業用ビルを管理されていると知り、売却相談を扱う部署があるか伺いたくご連絡しました。
C|買取・開発会社への例
駅前の小規模商業ビルを取得・再生されており、当社と検討領域が近いため、物件売買や情報交換の可能性について一度お話ししたくご連絡しました。
この一文を作れない会社は、現時点では連絡する理由が弱い可能性があります。
調べても分からない場合は、分かったふりをせず、電話の目的を「事業用不動産の売買をどの部署で扱っているか確認したい」と絞ります。
重要なのは、立派な営業トークを作ることではありません。
相手の仕事を一つ調べ、自社との接点を一つ考え、何を確認したいかを一つ決めることが、片っ端から電話する状態を抜ける最初の準備です。
営業先リスト作成チェックリスト
- 自社が取得するエリア・用途・価格帯を検索語へ変えた
- 相手の主な業務を確認した
- 事業用売買・管理・取得・開発の実績を一つ確認した
- 自社と相手の接点を一文で書いた
- A・B・Cの仮の優先順位を付けた
- 担当部署と問い合わせ先を確認した
- 初回連絡の結果と相手の反応を記録できるようにした
- 次回行動と期限を記録する欄を作った
まとめ
物件情報を集めるうえで、最初に増やすべきものは電話件数ではありません。
自社が何を買う会社かを理解し、その物件情報に接する相手を探し、相手が「この案件なら相談できる」と判断できる関係を作ることが先です。
早く情報が届いても、自社で検討できず、価格が合わなければ取得にはつながりません。まずは情報の流れと相手の違いを理解し、接点のある会社へ理由を持って連絡します。
次の記事では、最初の電話で何を伝え、何を質問し、どこまでを目的にすればよいかを整理します。


