初回電話からアポイントにつながると、次に出てくるのが「面談で何を話せばよいのか」という悩みです。
30分も何を話せばよいのだろう。
会社案内はどこまで説明すればよいのか。
相手へ何を質問すればよいのか。
経験が浅いと、着席後すぐに会社案内を開き、沿革、組織、実績、事業内容を最初から順番に説明しがちです。
説明を終えた後、相手から「分かりました。何かあれば連絡します」と言われて面談が終わる。これでは相手の仕事が分からず、相手にもこちらへ何を相談すればよいか残りません。
初回面談の目的は、会社説明を終えることではありません。
相手の仕事を知り、自社との接点を見つけ、次に連絡できる理由を一つ作ることです。
この記事では、初回面談の30分を5段階に分け、初心者でも進めやすい順番を解説します。
初回面談は会社説明の場ではない
初回面談では、相手もこちらを確認しています。
- 何をしている会社なのか
- 仲介会社なのか、買主なのか
- どのような物件を検討できるのか
- 情報提供後に適切な対応をする相手か
- 今後も会う意味がありそうか
こちらも相手について同じように確認します。
- 仲介、管理、買取、開発のうち何が主な業務か
- どのエリア、用途、価格帯を扱っているか
- どのような顧客と付き合っているか
- 自社とどこで仕事がつながりそうか
つまり、初回面談は一方が説明し、もう一方が聞く場ではありません。
お互いの仕事を知り、次に持ち込む情報を判断できる状態を作る場です。
その場で物件情報をもらえなくても、面談が無駄になるわけではありません。相手の得意分野が分かれば、将来こちらから案件を相談できます。自社の買い方が伝われば、相手は物件を見たときに相談先の候補へ入れられます。
面談30分を5段階に分ける
面談は、次の順番で進めます。
| 時間の目安 | 段階 | 行うこと |
|---|---|---|
| 0~3分 | 訪問理由 | なぜその会社へ連絡したかを伝える |
| 3~13分 | 相手を知る | 主な業務、得意分野、最近の注力先を聞く |
| 13~20分 | 自社を伝える | 買主であること、取得対象、取得後の事業を説明する |
| 20~27分 | 接点を探す | 物件例や質疑から、相談できることを確認する |
| 27~30分 | 次を決める | 送付資料、回答事項、次回連絡を決める |
必ず分刻みで進めるという意味ではありません。相手の話が具体的なら、聞く時間を長くします。すでに自社を知っている相手なら、会社説明は短くできます。
重要なのは、会社説明だけで30分を使い切らないことです。
面談前に準備するもの
初回面談では、立派なプレゼンテーション資料より、会話を具体化する材料を準備します。
A|相手へ連絡した理由
初回電話で伝えた内容を、もう一度確認します。
- 事業用不動産の売買実績を見た
- 募集看板や管理看板を見た
- 自社の対象エリアで取扱いが多い
- 取得・開発・再販の領域が近い
- 過去に自社との取引がある
冒頭で訪問理由を示すと、相手も何について話せばよいか判断しやすくなります。
B|相手へ聞く質問
質問を3つ程度、メモしておきます。すべて聞くためではなく、会話が止まったときに戻る場所を作るためです。
- 主に扱うエリア・用途・価格帯
- 仲介、管理、買取、開発のどれが中心か
- どのような顧客から相談を受けるか
- 最近増えている相談は何か
- 自社と接点になりそうな業務は何か
C|自社の買い方を説明する一文
エリア、用途、価格を並べるだけでなく、取得後に何をする会社かまで一文にします。
当社は都内の店舗・事務所ビルを自社で取得し、空室へのテナント誘致、賃料条件、建物の問題を改善しながら中長期で保有しています。
自社の取得クライテリアに合わせ、社外へ開示できる範囲で用意します。
D|具体的な物件を一件
最近取得した物件、最後まで検討した物件、早期に見送った物件のいずれかを一件用意します。
物件名を出せない場合は、駅、用途、規模、評価した点、取得・見送り理由だけでも構いません。
抽象的な取得条件より、具体的な案件を一件話す方が、相手は自社の判断を理解しやすくなります。
冒頭で訪問理由を伝える
着席後、すぐに会社案内を開く必要はありません。まず、電話で伝えた訪問理由から入ります。
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。御社が城南エリアで事業用ビルを多く扱われていると拝見し、まず御社の取組みを教えていただきたいと思い伺いました。
過去の接点がある場合は、それを使います。
以前、御社に仲介いただいた案件があり、改めて現在どのような案件を扱われているのか伺いたいと思い、ご連絡しました。
冒頭の目的は、自社の説明を始めることではありません。なぜ相手に会いに来たのかを伝え、相手の話へ移ることです。
相手の仕事から聞く
訪問理由を伝えた後、相手の業務を聞きます。
A|最初に使いやすい質問
- 御社では現在、どの事業に力を入れていますか
- 売買では、どのような物件を扱うことが多いですか
- 仲介と自社取得では、どちらが多いですか
- 営業エリアは、どのあたりが中心ですか
- 売主は個人と法人のどちらが多いですか
- 最近、増えている相談はありますか
質問票のように上から順番に読み上げる必要はありません。相手の回答から、次の質問を一つ選びます。
B|相手の回答を掘り下げる
相手から「管理しているオーナーから売却相談を受けることが多い」と聞いた場合は、次のように具体化します。
管理物件は、店舗・事務所と住宅では、どちらが多いでしょうか。
「自社でも買い取る」と聞いた場合は、次のように質問できます。
どのような案件は自社で取得し、どのような案件は仲介されますか。
相手の言葉を拾って質問すれば、会話が自然につながります。予定した質問をすべて消化することより、相手の業務と情報源を具体的に理解することが重要です。
自社の買い方を短く伝える
相手の仕事を一通り聞いた後、自社の説明へ移ります。
ありがとうございます。御社の取組みが分かりましたので、当社が購入している物件も簡単にご説明します。
説明するのは、次の4点です。
①自社で取得する買主であること
②主に買うエリア・用途・価格帯
③どのような状態の物件を検討できるか
④取得後に何をして収益を作るか
例えば、次のように話します。
当社は、都内の店舗・事務所ビルを自社で取得しています。中心価格帯は〇億円前後です。満室物件だけでなく、空室や賃料が相場より低い物件も検討します。取得後にリーシングや賃料条件、建物の問題を改善できることが当社の強みです。
会社全体を説明するのではなく、相手が「どの物件なら紹介できるか」を判断するための情報に絞ります。
A|具体的な物件例を加える
用意した物件例を一件加えると、判断軸が伝わりやすくなります。
最近は、駅から少し離れていますが、人通りのある商店街沿いのビルを検討しました。1階店舗は強かった一方、上階の空室が長く、賃料を伸ばしにくいと判断して見送りました。
この例から、相手には次のことが伝わります。
- 駅距離だけで判断しない
- 1階と上階を分けて評価する
- 空室自体が見送り理由ではない
- 取得後の賃料改善可能性を重視する
取得クライテリアをすべて読み上げるより、「何を見て、どう判断したか」を一件話す方が、自社の買い方を具体的に伝えられます。
B|分からない質問を受けた場合
面談では、すぐに答えられない質問も出ます。
借地権付きでも買えますか。
価格上限は、条件がよければどこまで伸ばせますか。
違反状態が残っていても検討できますか。
分からないときは推測で答えず、期限を決めて持ち帰ります。
その条件は私の判断だけでは回答できないため、社内で確認して〇日までにご連絡します。
さらに、なぜ相手がその質問をしたのか、該当しそうな案件があるのかを確認します。
ちなみに、現在その条件に近い案件がございますか。
背景が分かれば、社内でも確認しやすくなります。
自社と相手の接点を整理する
相手の業務と自社の取得方針を確認したら、どこで仕事がつながるかを整理します。
- 相手が仲介する物件を自社が取得する
- 相手の管理オーナーからの売却相談に対応する
- 相手が自社取得しない案件を検討する
- 相手の開発・再生後の物件を取得する
- 自社が売却する際に相手へ相談する
- 管理、リーシング、工事などで協業する
面談中に物件情報がなくても、接点を一つ言葉にできれば、次の連絡理由になります。
御社は城南エリアの管理オーナーから売却相談を受けることが多く、当社は同エリアの店舗・事務所ビルを取得していますので、接点がありそうです。
相手から情報をもらうことだけでなく、相手が探しているものも確認します。
次に連絡する理由を決めて終える
面談の最後を「今後ともよろしくお願いします」だけで終えると、次の連絡が難しくなります。
終了前に、次に行うことを一つ決めます。
- 自社の取得実績・会社案内を送る
- 取得クライテリアを一枚にして送る
- 面談で話した物件を確認して回答する
- 相手が探している案件を社内で確認する
- 分からなかった質問へ回答する
- 次に連絡する時期を決める
例えば、次のように伝えます。
本日お話しした取得実績を今日中にメールします。借地権付き物件の取扱いについては社内で確認し、火曜日までに回答します。
相手が探している物件が分かった場合は、次のように返せます。
御社が探されている案件に近い情報があれば、こちらからもご相談します。
情報を一方的にもらうだけではなく、相手の業務に合う案件を相談できる状態を作ることも、継続的な情報交換につながります。
面談後に記録すること
面談当日中に、次の内容を営業リストへ残します。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 相手の主な業務 | 仲介、管理、買取、開発 |
| 得意な物件 | エリア、用途、価格帯 |
| 顧客・情報源 | 個人オーナー、法人、管理先など |
| 相手が探しているもの | 購入案件、売却先、協業先 |
| 自社へ関心を示した点 | 空室、低賃料、商業ビルなど |
| 持ち帰った質問 | 確認内容と回答期限 |
| 次回行動 | 送付物、連絡日、相談する案件 |
お礼のメールには、定型文だけでなく、面談で確認した接点と約束を短く書きます。
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。城南エリアの管理物件から売却相談を受けることが多いとのお話が特に参考になりました。当社の取得実績を添付します。借地権付き物件の取扱いについては、火曜日までに改めて回答します。
面談で約束した資料や回答を期限どおり返すことが、次の情報交換の土台になります。
初回面談チェックリスト
- 相手へ連絡した理由を一文で言える
- 相手へ聞く質問を3つ用意した
- 自社が買主であることを明確にした
- 取得対象と取得後の事業を短く説明した
- 取得・検討・見送り案件を一件用意した
- 分からない質問を推測で答えなかった
- 持ち帰る質問と回答期限を確認した
- 相手が探しているものも聞いた
- 次回行動を一つ決めた
- 当日中に面談内容を記録した
まとめ
初回面談の成果は、その場でもらった物件情報の数ではありません。
一度会えば、次からは「前回お話しした空室のある店舗・事務所ビルです」「御社が探していた価格帯に近い案件です」と、具体的な会話ができます。
面談では、相手の仕事を知り、自社の買い方を短く伝え、両社の接点を確認します。そして、誰が、何を、いつまでに行うかを決めて終えます。
次にどのような情報を持って、誰が、いつ連絡するかが決まったことが、初回面談の成果です。
次の記事では、実際に物件情報が届いた後、最初に何を確認し、どのように返事をするかを整理します。


